研究員

研究員
大学院の修士課程を修了して2020年4月に新卒で入社し、現在6年目です。入社と同時に、マスターコースと同じ研究室でドクターコースにも進学したので、2024年3月までは“社会人ドクター”という立ち位置でした。晴れて博士号を取得することができ、今は会社員として生活しています。
社会人ドクター時代の状況をお話しすると、平日は完全に会社員として活動し、有給休暇や代休を利用したり週末を使ったりして大学の研究室に行き、必要な実験を進めていました。
岩手大学農学部出身で、博士課程のUGAS(連合農学研究科)も岩手大学に在籍していたので、通学するときは東北新幹線で通っていました。
株式会社リバネスさんが開催していた、「キャリアディスカバリーフォーラム」というイベントがありまして。
当社のようなスタートアップ企業や、大企業の研究開発をもっと幅広く広げていきたいという企業さん、また、アカデミアの学生さんや助教の方など、「アカデミアの研究を実用化に向けて企業の研究とコラボできたら」と考える人たちが集まるマッチングの場です。そのイベントに、修士の就活の年に参加して、そこで初めてガルデリアと出会いました。
主にバクテリアの大腸菌を使って、大きいジャンルとしては分子生物学、その中でも生体膜関連因子の生合成を専門に研究をしてきました。
大腸菌も人も、すべての生物は「細胞」をもっていて、その細胞は脂質の膜で覆われているんです。脂質の膜(生体膜)には脂質だけではなく、たくさんのタンパク質が埋め込まれています。そういう生体膜に埋め込まれているタンパク質をまとめて「膜タンパク質」と呼んでいます。今私たちが耳で音を聞いたり、目で色を見たりできるのも、その膜タンパク質があるおかげです。
タンパク質は細胞の内側(細胞質)で合成されます。これは膜タンパク質や細胞の外へ分泌されるタンパク質にも当てはまります。細胞の内側でつくられたタンパク質が適切に膜の中へ埋め込まれるしくみや細胞の外へ分泌されるしくみは、世界中で精力的に研究されてきましたが、まだ分かっていないことが多くあります。産業との関連でお話しすると、例えば創薬のターゲットの半数以上が膜タンパク質です。膜タンパク質は物質の運搬や情報伝達、エネルギー合成など、生きるために重要な機能を担っているから、創薬の重要ターゲットになっているわけです。そんな膜タンパク質を膜に埋め込むしくみが研究される中で、MPIaseという糖脂質(糖と脂質がつながった物質)が発見されました。MPIaseはタンパク質ではなく糖脂質なのですが、酵素のようなはたらきをする特殊な物質です。その後の研究でMPIaseの機能は分かってきましたが、MPIase自体が細胞の中でどのように合成されているのかは、未知のままでした。大学では、その合成メカニズムを研究してきました。

さっきお話しした膜タンパク質を生体膜に埋め込むしくみやMPIaseという糖脂質は、大腸菌にだけあるものではなく、植物や人間を含めいろいろな生き物に存在すると考えられています。僕が大腸菌を使って研究をしていたのは、別に大腸菌が好きだからとかこだわりがあるからとかではなく、大腸菌が比較的単純な生物で過去のデータも多く、研究材料として扱いやすいからなんですね。
それに、自分の研究を進めるうえで身に着けた実験技術や経験には、他の分野にも生かせるものが多分にあります。そういう面では、大学での研究分野に限らずいろいろなライフサイエンスに、自分の知識や経験が応用できるんじゃないかなとは思っていました。
大企業か、スタートアップか、アカデミアに残るのかという複数の選択肢はありましたが、スタートアップにした一番大きい理由は「おもしろそうだったから」ですね。
特に、ガルデリアなら「研究が社会実装できるかもしれない」ということがすごくおもしろそうだと思って。大企業でももちろんできるとは思うんですが、やっぱりベンチャー企業、スタートアップ企業の方が、スピードが早そうだと考えました。
あと、例えば大企業の100人でつくった結果を上市するよりも、限られた数人でつくって上市できたら、そちらの方が自分の貢献度が高いですし、純粋な研究以外の仕事にも関わることができるのはわくわくして楽しそうだなというのも、大きな理由ですね。
それから、藻類を事業にする企業って今はいっぱいあると思いますが、燃料をつくるとか、食料や化粧品材料にするとかがほとんどだと思うんです。一方ガルデリアは、「藻類で貴金属吸着」という当時まったく聞いたことがなかった分野に挑んでいるっていう、唯一無二な特殊性にも惹かれました。
自分がもっている「スキルや経験」と、自分が「やりたいこと」、そして会社から「求められるもの」の3つの円が重なったところが一番適した就職先だと考えた場合、ガルデリアは、まさにそういうところだと感じました。
研究開発です。主なテーマは大きく2つで、ひとつは製品開発です。ガルディエリアを材料にした貴金属吸着材の製品・製造プロセス研究開発の主担当をやっています。
ガルディエリアの細胞の大きさは5 µm前後で、そのまま貴金属吸着材として使うのは難しいです。それは、吸着材を使う場面は、貴金属が含まれている液体から貴金属を回収するときだからです。液体に混ぜたガルディエリアという細かい粒子を回収するには、遠心分離機が必要ですが、処理量が大量で、なおかつ腐食性が高い液体、新たに大きな機械を置く場所がない廃液処理場所がほとんどという状況では、遠心分離が使えません。
そこで、私たちはガルディエリアを成形して、フィルター濾過で簡単に固液分離することができるような加工方法や回収システムを研究開発しました。
この固液分離方法の試行錯誤や、フィルター濾過で使える貴金属吸着材自体の開発に入社当初から取り組み、入社3年目頃に現在の製品の原型を開発することができました。固液分離のしやすさを、未加工状態のガルディエリアに比べて100倍以上に改善することができ、これで初めて廃液処理現場での実用化を達成できました。その後も改良を続けています。
もうひとつのテーマは、ガルディエリア有用株コレクションです。ガルディエリアは温泉にすんでいる生物なので、日本全国いろいろな温泉地からサンプリングしてきて、より優秀な株をスクリーニングし、選抜していくんです。
日本は北から南まで長く気候がさまざまなので、温泉地によって性質の違う特殊なやつが見つかるかもしれません。
採取した藻は、そのままだといろいろな種類の藻がごっちゃになっていますし、ガルディエリアの培養に支障をきたす雑菌もいっぱい入っています。それを、当社と協業していただいている京都大学発のバイオビジネスベンチャー・株式会社Seed Bankさんに依頼して、雑菌や他の藻類を除き、たくさんのガルディエリア細胞の中から1細胞だけを単離してクローン化します。
1細胞からクローン化すると、細胞が増殖しても同じ性質の細胞が増えていくので、細胞の均一性が増すんですね。自然界ではいろいろな性質の細胞が混じりあっていますが、それだと産業的に培養したとき、ばらつきが多くて安定した生産ができません。なのでクローン化が重要です。そうしてひとつの温泉地からサンプリングしたサンプルからでも、例えば10株純粋なクローン株をつくると、10種類のガルディエリア株ができることになります。身近なイメージだと、一口に米と言っても「あきたこまち」や「青天の霹靂」など多くの品種があるようなものです。同じガルディエリアではあっても、クローンの1株1株が少しずつ違う性質をもっています。別々の温泉地から単離したクローンはもちろんのこと、同じ温泉地でも、日当たりのいいところから採ったやつとか、ちょっと乾いてるところから採ったやつとかでは、性質が大きく違うかもしれません。
これまでに純粋クローン株だけでも40株近くをコレクションできていて、これはガルディエリア近縁種のカルチャーコレクションでは国内最大、世界でも3番目に大きな規模です。自然界には数え切れないほどの微生物がいるので、今後世界中から100株、1,000株……って採り続けていくと、おそらく、人為的な育種(品種改良)をしなくても驚くほど優秀な個体も見つかってくるんじゃないかなと考えています。
もっと培養効率が良い株や栄養価の高い株、まだ見ぬ機能性物質を生産する株、などなど有用な個体が見つかれば、当社にとっても社会にとっても大きなメリットです。ですから、この有用株コレクションとその維持は、会社が続く限りずっとやっていく方針です。
吸着材の開発と有用株コレクションの仕事以外には、製造プラントの立ち上げ、製造設備の改善、新規の用途開発、他社との渉外、簡単な法令業務、採用業務なども、幅広くやっています。

まだまだ人数が少ないので、一人ひとりがプロジェクトを複数もっていて、一人ひとりがリーダーになっています。もちろんひとりだけで仕事はできませんから、「誰にどのような補助をしてほしいか」というのを他の社員にお願いして、その時々で適したチームをつくったり役割分担をしたりっていうような感じでやってます。この動き方は、スタートアップの、少人数だからこその魅力かなとは思いますね。
つい昨年まで、うちはまだひとつも製品を上市してないすごくちっちゃい会社で、やっぱりスタートアップ企業ってすごく跳ねる可能性がある反面、うまくいかずに潰れてしまう会社もたくさんあると思うんですよね。極論すれば、その“潰れるおそれがある”っていうのも含めて、僕はおもしろいと思って入社しました。
それは、入社した年に谷本さん(代表)の前でも言ったんで、多分怒られないと思いますけど(笑)。半分冗談、半分本気です。そんな感じで、逆に公務員のような安定な仕事を求めている方とか、ずっと同じ作業をしていたいみたいな方にはあんまり向いてないかなとは思いますね。
研究開発職の場合、ずっと自分の研究だけに没頭していたいというような人よりも、少し俯瞰して、それを生かして世の中に何を生み出せるのかということを考えていける人のほうが合うように思います。一人ひとりがオーナーシップをもち、他人事にせずにやっていける人が向いているのかな。多分、そういう人のほうが活躍しやすい組織だと思いますし、そういう人が多くいてくれると、仕事全体が早く進んで会社としてもWin-Winなのかなっていう感じはします。
そうですね。やっぱり組織が今後大きくなっていくにつれて、いろいろ変わってくるだろうとは思うんですけれども、今いる社員全員「人がいいな」とは思いますね。人間関係で苦痛に思ったことはないです。チームで仕事をする際に、年齢や役職に制限されない率直なコミュニケーションができる環境はありがたいと思います。
あとは、やはりオーナーシップをもっていることが、一番この会社で生き生き働くためには必要なのかなと思いますし、そういう人にとってはとても良い環境だと思います。
