研究員
研究員
大学院の修士課程 (マスターコース) を修了して2020年4月に新卒で入社し、現在3年目です。入社と同時に、マスターコースと同じ研究室でドクターコースにも進学したので、今は“社会人ドクター”という立ち位置ですが、基本は会社員として生活しています。
平日は完全に会社員として活動し、有給休暇や代休を利用したり週末を使ったりして大学に行き、必要な実験を進めている感じです。
岩手大学出身で、今も岩手大学に在籍しているので、通学するときは東北新幹線で通っています。
株式会社リバネスさんが毎年開催している、「キャリアディスカバリーフォーラム」というイベントがありまして。
当社のようなスタートアップ企業や、大企業の研究開発をもっと幅広く広げていきたいという企業さん、また、アカデミアの学生さんや助教の方など、「アカデミアの研究を実用化に向けて企業の研究とコラボできたら」と考える人たちが集まるマッチングの場です。そのイベントに就活の年に参加して、そこで初めてガルデリアと出会いました。
主にバクテリアの大腸菌を使って、大きいジャンルとしては分子生物学、その中でも生体膜関連の生合成を専門に研究をしてきました。
大腸菌も人も、すべての生物は「細胞」をもっていて、その細胞は脂質の膜で覆われているんです。脂質の膜(生体膜)には脂質だけではなく、たくさんのタンパク質が埋め込まれています。そういう生体膜に埋め込まれているタンパク質をまとめて「膜タンパク質」と呼んでいます。今私たちが耳で音を聞いたり、目で色を見たりできるのも、その膜タンパク質があるおかげです。
タンパク質は細胞の内側(細胞質)で合成されます。これは膜タンパク質や細胞の外へ分泌されるタンパク質にも当てはまります。細胞の内側でつくられたタンパク質が適切に膜の中へ埋め込まれるしくみや細胞の外へ分泌されるしくみは、世界中で精力的に研究されてきましたが、まだ分かっていないことが多くあります。産業的な話だと、創薬のターゲットの半数以上が膜タンパク質です。膜タンパク質は物質の運搬や情報伝達、エネルギー合成など、生きるために重要な機能を担っているからです。そんな膜タンパク質を膜に埋め込むしくみが研究される中で、MPIaseという糖脂質(糖と脂質がつながった物質)が発見されました。MPIaseは糖脂質にもかかわらず、酵素のようなはたらきをする特殊な物質です。MPIaseの機能は分かってきましたが、MPIase自体が細胞の中でどう合成されているのかは、未知のままでした。大学では、その合成メカニズムを研究してきました。
僕が大学で大腸菌を使った研究をしているのは、別に大腸菌が好きだからとかこだわりがあるからとかではなく、比較的単純な生物で研究材料として調べやすいからなんですね。
さっきお話ししたMPIaseという糖脂質や膜タンパク質を埋め込むしくみは、大腸菌にだけあるものではなく、植物や人間含めいろいろな生き物に存在すると考えられています。また、自分の研究を進めるうえで身に着けた実験技術や経験には、他の分野にも生かせるものが多分にあります。そういう面では、大学での研究分野に限らずいろいろなライフサイエンスに、自分の知識や経験が応用できるなとは思っていました。
大企業か、スタートアップか、アカデミアに残るのかという複数の選択肢はありましたが、スタートアップにした一番大きい理由は「おもしろそうだったから」ですね。
特に、ガルデリアなら「研究が社会実装できるかもしれない」ということがすごくおもしろそうだと思って。大企業でももちろんできるとは思うんですが、やっぱりベンチャー企業、スタートアップ企業の方が、スピードが早そうだと考えました。
あと、例えば100人でつくった結果を上市するのよりは、数人でつくって上市したら、そちらの方が自分の貢献度が高いですし、純粋な研究以外にも関わることができるのはわくわくして楽しそうだなというのも、大きな理由ですね。
それから、藻類を事業にする企業って今はいっぱいあると思いますが、燃料をつくるとか、食料にするとかがほとんどだと思うんです。一方ガルデリアは、「藻類で貴金属吸着」という当時まったく聞いたことがなかった分野でやろうとしているっていう、唯一無二な特殊性にも惹かれました。
自分がもっている「スキルや経験」と、自分が「やりたいこと」、そして会社から「求められるもの」の3つの円が重なったところが、一番適した就職先だと考えた場合、ガルデリアは、まさにそういうところだと感じました。
研究開発です。プロジェクトとしては大きく2つで、ひとつは製品開発です。貴金属吸着材の製品・プロセス研究開発の主担当をやっています。
もうひとつは、ガルディエリア有用株コレクションプロジェクトです。ガルディエリアは温泉にすんでいる生物なので、日本全国いろいろな温泉地からサンプリングしてきて、より優秀な株をスクリーニングし、選抜していくんです。
日本は北から南まで長く気候がさまざまなので、温泉地によって性質の違う特殊なやつが見つかるかもしれません。
採取した藻は、そのままだといろいろな種類の藻がごっちゃになっていますし、ガルディエリアの培養に支障をきたす雑菌もいっぱい入っています。それを、当社と協業していただいている京都大学発のバイオビジネスベンチャー・株式会社Seed Bankさんに依頼して、雑菌を除き、たくさんのガルディエリア細胞の中から1細胞だけを単離してクローン化します。
1細胞からクローン化すると、細胞が増殖しても同じ性質の細胞が増えていくので、細胞の均一性が増すんですね。自然界ではいろいろな性質の細胞が混じりあっていますが、それだと産業的に培養したとき、ばらつきが多くて安定した生産ができません。なのでクローン化が重要です。そうしてひとつの温泉地からサンプリングしたサンプルからでも、例えば10株純粋なクローン株をつくると、10種類のガルディエリア株ができることになります。身近なイメージだと、一口に米と言っても「あきたこまち」や「青天の霹靂」など多くの品種があるようなものです。同じガルディエリアではあっても、クローンの1株1株が少しずつ違う性質をもっています。別々の温泉地から単離したクローンはもちろんのこと、同じ温泉地でも、日当たりのいいところから採ったやつとか、ちょっと乾いてるところから採ったやつとかでは、性質が大きく違うかもしれません。
今はまだ30株くらいのコレクションですが、自然界には数え切れないほどの微生物がいるので、100株、1,000株……って採り続けていくと、おそらく、人為的な育種をしなくても驚くほど優秀な個体も見つかってくるんじゃないかなと考えています。
もっと培養効率が良い株や栄養価の高い株、まだ見ぬ機能性物質を生産する株、などなど有用な個体が見つかれば、当社にとっても社会にとっても大きなメリットです。ですから、この有用株コレクションプロジェクトは、会社が続く限りずっとやっていくっていう方針です。
まだまだ人数が少ないので、一人ひとりがプロジェクトをもっていて、一人ひとりがリーダーになっています。、もちろんひとりだけで仕事はできませんから、「誰にどのような補助をしてほしいか」というのを他の社員にお願いして、その時々で適したチームをつくったり役割分担をしたりっていうような感じでやってます。この動き方は、スタートアップの、少人数だからこその魅力かなとは思いますね。
うちはまだひとつも製品を上市してないすごくちっちゃい会社で、やっぱりスタートアップ企業ってすごく跳ねる可能性がある反面、うまくいかずに潰れてしまう会社もたくさんあると思うんですよね。極論すれば、その“潰れるおそれがある”っていうのも含めて、僕はおもしろいと思ってますね。
多分これは、入社した年に谷本さん(代表)の前でも言ったんで、いま言っても多分怒られないと思いますけど(笑)。そんな感じで、逆に安定を求めている方とか、ずっと同じ作業をしていたいみたいな方はあんまり向いてないかなとは思いますね。
ずっと自分の研究だけに没頭しているのが好きみたいな人よりも、少し俯瞰して、それを生かして世の中に何を生み出せるのかということを考えていける方が合うかと思います。一人ひとりがオーナーシップもち、他人事にせずにやっていける人が向いているのかな。多分、そういう人の方がやりやすい組織だと思いますし、会社としてもそういう人が多くいてくれると、仕事全体も早く進んでWin-Winなのかなっていう感じはします。
そうですね。やっぱり組織が今後大きくなっていくにつれて、いろいろ変わってくるだろうとは思うんですけれども、今いる社員全員「人がいいな」とは思いますね。人間関係で苦痛に思ったことはないです。チームで仕事をする際に、率直なコミュニケーションができる環境はありがたいと思います。
あとは、やはりオーナーシップをもっていることが一番この会社で生き生き働くためには必要なのかなと思いますし、そういう人にとってはとても良い環境だと思います。